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昭和マイルド

少し文化的になって店を出る
気分は何ものにも代えがたい
だからしつこくものを出す
――長野和夫

昭和40年男が残したもの

現代レコードショップの礎を築いた名店ともいえる「芽瑠璃堂」の創業者・長野和夫さんが、再びレコード店を始めたわけを聞いた。

※この記事は雑誌『昭和40年男』、2022年2月号に掲載したものです。

店主の軌跡も感じられる、キャリアで集まった音源

田中康夫の 『なんとなく、クリスタル』 にも登場した、1974年創業の輸入盤レコード店の草分け、芽瑠璃堂。吉祥寺の店にはピーター・バラカンや小西康陽など、音楽業界の権威たちが数多く集った。

時は経ちスタジオ経営やプロデュース業に専念していた創業者・長野和夫さんが2019年、埼玉・坂戸に店舗を復活。駅近くのビル2階にひっそりと開店していて、たどり着いた人にこそ、いい音源との出会いや会話体験が得られる感じがたまらなく良い。

昭和27年生まれの大先輩である長野さんは、お客さんと音楽の話をする楽しさに飢え、原点回帰を決意。多忙な音楽業のなかでもできるだけこの店に立っている。長野さんが何十年とバイイングをしてきたレコードがここに揃っているだけで価値はあるが、長年の音楽友達が手放す貴重なレコードや、同志だった経堂『ハスキーレコード』の中川氏が亡くなった際に受け継いだものなど、ラインナップに私的なものが揃うのも魅力のひとつ。

「レコード屋が教えてくれる雑学が好きだった。少し文化的になって店を出る気分は何にも代えがたい。だからウチはしつこくものを出す」 と長野さん。物を扱う店の存在意義を再認識させてもらえる。

長野和夫(ながのかずお)さん。ちなみにトップ画像は、創業時の『芽瑠璃堂』と長野さんと、愛車のスカイライン2000GTだ。

SHOP DATA『芽瑠璃堂』

現代レコードショップの礎を築いた名店。キャリアゆえの品ぞろえはもちろん、希少盤を除くレコードのコスパのよさは、一度店に訪れる価値が十分ある。音楽猛者なスタッフたちによる音楽ニュースなどが見られるHPも、頻繁に更新されるから必見!

※現在は埼玉県川越市に移転しております。
HPリンク:https://www.merurido.jp

取材・文:トロピカル松村