昭和の恋愛は、好きな人に告白するのも一苦労。男たちはない知恵を絞り、少ない予算でいかに自分の気持ちを伝えるかに腐心したのだった。『テレフォン・ノイローゼ』『涙のラブレター』などをBGMにしてお読みください。
※この記事は雑誌『昭和40年男』、2024年6月号に掲載したものです。

★家電
告白への第一関門が“いえでん”。お父さんが電話に出たりすると、バツが悪い。付き合い始めたら、「8時ちょうどにかけるから」「1回鳴らすから」とか決めておくのがベター。コードレスなんてものもなかったから、茶の間にある電話を廊下や玄関まで引っぱって来なきゃ甘い話もゆっくりできない。電話しながらカールコードに指を絡ませるのも今じゃ見られなくなった光景だけど、電電公社の電話機の受話器も、今思えば結構重たかった。

★交換日記
学校じゃおおっぴらにおしゃべりもできないし、家でも家族の目が気になり長電話もできない。恥じらい世代ド真ん中の中高生カップルにとって、日々のコミュニケーションツールとして活躍したのが交換日記。学校での些細な出来事から恋愛論まで、ほぼ毎日のように交換されていたのから昭和のカップルはマメだ。別れてしまったら絶対見たくない内容なだけに、保存率は非常に低い。恋の終わりにを“燃やす”という儀式が付き物なのも昭和か。

★ラブレター
書いては書き直し、また書いてはの繰り返し。これだという名文(自分比)も書けたところで、次の問題は相手に手紙をどうやって渡すかだ。学校の下駄箱に忍ばせるか、親友に託して渡してもらうか、もしくは呼び出してもらうか、帰り道でまちぶせするか。胸の奥にしまっていた“好き”の想いを届ける準備にかける時間は、夏休みの自由研究を仕上げるよりも優に長いが、砕け散るのはあっという間。成功率は低いが、想い出としては大きい。

★キューピットさま
こっくりさんの“恋愛専科”版とでもいうような占い遊び。やっていたのはほぼ女子。男子は冷やかし専門。2人~4人ぐらいで集まり、紙に五十音とYES/NO、0~9の文字、それにハートマークを書いて準備OK。ハートマークの上に立てた鉛筆を参加者全員で握り、「キューピットさま、○○くんが好きな人は誰ですか?」とか訊くと、手が勝手に文字の方向に動いて…。「手に力入れてんでしょ?」とか茶化したりするとあとで呪われるとか、キューピットさまなのに怖い言われもあった。

★ハートのペンダント
ファンシーショップ、修学旅行先のお土産屋、もしくは、雑誌の広告で見つけた通販で購入。シルバーとかではないので、中高生にもやさしい価格だった。ハートが2つに割れるものは現在でも売っているが、“LOVE”という小っ恥ずかしい文字が入っているのが昭和スタイル。学校には身に付けて行けないが、ペンケースの中か学ランの隠しポケットに入れて携帯し、恋人の証に。カップル用のペンダントといえば、写真が入れられるロケット型やハート型のやつや、名前を刻印できるやつとかも忘れがたい。

★カセットテープ
ドライブデートのシチュエーションを考えて選曲するっていうのは、もうちょいオトナになってから。中高時代は同性の友達同士でお気に入りテープをやりとりすることもあったが、女子に対しては、ラブソング満載の半ばラブレター的な意味合いを含んだ内容でプレゼントすることも。ラストの曲が最後まで入るか入らないか、テープの巻きを凝視しながらやきもき。そこはフェードアウトさせる派とさせたくない派に分かれる。声を入れてディスクジョッキー風に構成する上級者もいた。

★ハートのチョコレート
ポップキャンディ、パラソルチョコレート、チョコえんぴつなど、いまだ健在の“愛らしい”ヒット商品を生み出している不二家が、昭和10年に発売開始したハートチョコレート。現在はミニサイズのみのラインナップとなったが、かつてはバレンタインの本命チョコとしても義理チョコとしても重宝された。昭和50年代のバレンタインといえばこれだった。多くの40年男は自分のおこずかいで買ったことはないはずで、それだけに今はむしろ、後輩社員からの義理チョコとしてこれをもらうのがうれしかったりもするが。

★伝言板
末期は構内の落とし物を書き記すぐらいのものとなり、今はほとんどその姿をみかけなくなた駅の伝言板。漫画『シティーハンター』で主人公が依頼人とのやりとりをする場所として使われていた新宿駅東口にも、もちろん今はない。かつては待ち合わせ場所の連絡、他人からの冷やかし含む相合い傘、「いつまでも好き!」など公園の落書きレベルでも恋人たちに活用されていた。野口五郎『私鉄沿線』が聴きたくなる。






