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昭和マイルド

飾り窓のデコイ
第1話
TSUBOGENのデコイ
――トロピカル松村

編集部

昭和マイルド ディレクターの「わざわざ飾らなくてもいい」おうちの昭和グッズコラム。

友人を家に招いたときに「面出し(めんだし)の多い家だね」とツッコミを入れられた。確かに棚にレコードをわざわざ面で見せて飾っているし、フリスビーや古いメジャーリーグヘルメットを壁にかけているから間違いない。僕は昭和50年代頃の若者の部屋を古雑誌で見るのが好きなのだが、考えてみると、彼らのなんと面出しの多いことか。ポスター、サーフボード、ギターに、お気に入りの洋服や、シューズまで。考えてみるとあの頃の若者は、現代よりずっと「鑑賞して楽しむ」文化の中にいたのかもしれない。1988年生まれの筆者の世代にとって主張の多い当時の部屋はあまりお洒落と捉えられない。でも、思う存分飾って、眺めて、暮らすのって結構楽しいもんなんだよと声高に伝えたい。今日も僕は飾り窓のデコイを見て、幸せな気持ちになっているから。


 デコイとは狩猟で囮に使う鳥の模型のことで、それがいつからかインテリアとして用いられるようになった。大衆的に部屋で置かれるようになったのは70年代後半頃からだと思う。部屋にアウトドア志向やトロピカルテイストを取り入れるのがブームだったあの頃の若者にとって、デコイは絶好のアイテムだったのではないだろうか。ノベルティに力を入れていた伝説のファッションブランドVANが、兄弟ブランドのSCENE名義で1977年頃にデコイをリリースしているのがその良い証拠としている。ただの鳥の置物と思われがちだが、職人がひとつひとつ手で彫刻し、エアブラシで描いているものは見れば見るほど美しい。僕にとってはその繊細なブラシは、車のバニング(商用バンのカスタム)やサーフボードなどのエアブラシカルチャーを想起させてくれる。僕のデコイはSCENEではなくTSUBOGENという新潟で今も続けている職人のもので、80年代にYANASEで配られていたこちらもノベルティである。その頃は西海岸派の憧れであるVWビートルもYANASEが輸入販売をしていたから、やっぱり車やサーファー的要素を感じずにはいられない。僕が、デコイが好きな理由はそんなところだ。

トロピカル松村
とろぴかる・まつむら|1988年兵庫県生まれ。昭和マイルド、CRTジーンズのディレクター。POPEYE Web編集ライター。サーフィン誌の編集者を経て2017年独立。昭和50年代・西海岸ブーム期の私設博物館を2025年に閉館。著書『MY NIPPON SURFING SOUNDS』がある。