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昭和マイルド

これまではフォークの
いちファンでしかなかった
――平松稜大

ビバ・ヤング

ライブに行くと、昭和のフォークシーンが体感できるくらいにアコギも歌もトークも秀逸。番組企画で本人から“二代目坂崎幸之助”の称号を得るなど、40年男より一回りほど年上のベテラン勢が熱視線なのも納得だ。これからのフォークシーンは君に任せた!

――今回のソロアルバム、令和にこんな音楽が聴けるなんて感動しました。

平松:バンド活動(たけとんぼ)から数えると今年で10年になりました。ソロとしてちゃんとしたアルバムをリリースしたのは今回が初なんです。当時のフォークの人たちって20歳とかでファーストでてるから、10年遅いですよね……。あの頃は学生のものでしたから。自分は高校からギターを初めて、人前で歌うっていうのを始めたのが大学3年くらい。最初のうちは邦楽のアプローチとかあんまり考えてなかったんですよ。自分もメンバーもウエストコーストとか60年代後半~70年くらいまでのブリティッシュフォークロック好きだったので。

新作『ホームメイド』。フォークロック&カントリーミュージックに影響を受けた平松渾身の9曲が収録。

――そこからどのように日本のフォークを取り入れていったんですか?

平松:その頃、坂崎幸之助さんと吉田拓郎さんの『オールナイトニッポンゴールド』という番組があって、よく聴いてたんです。番組でいろんなフォークミュージシャンの名前が出てきて、かぐや姫とかを掘るようになり、日本のエッセンスを取り入れるようになっていきました。はっぴいえんどが再熱してシティポップなんかが盛り上がってましたから、なんでみんなこっち側にこないのかなぁと思っていました。なぜかあまりスリーフィンガー側に来ないんですよね(笑)

――表舞台にでるようになったのは?

平松:大きな転機は22年の11月に、斉藤哲夫さんに誘われてとあるライブイベントを見に行ったとき。そこにいたのが奇妙礼太郎さんと曽我部恵一さんと、高野寛さん。曾我部さんはたけとんぼのアルバムを出すときにレーベルでお世話になっていましたが、高野さんはお会いするのが初めてで、ご挨拶でCDを渡したんです。そしたらしばらくして高野さんから連絡があって「ハイドパークフェスティバルで加藤和彦さんのトリビュートバンドをやるんだけどアコースティックギターが弾ける人を探してるからどう?」って連絡があって。

――SAKEROCK 時代の星野源も出演していたあのハイドパークフェスですね。

平松:そのフェスがきっかけで松山猛さんや、北山修さん、坂崎幸之助さんらと交流を持つようになりました。坂崎さんは、5年ぶりの再会だったのに覚えてくださってて、その際にプロデューサーのきくち伸さんと名刺交換をさせていただいたんです。その人から数日後に『お台場フォーク村』という番組のオファーがきて、確かトークから演奏までを競うという内容のものだったと思うんですけど優勝して、二代目坂崎幸之助の称号をいただくことができました。

――それにしてもレジェンドたちとの交友関係が広い!

平松:名前を出した人たちって、自分にとっては憧れの人たちですからお会いするとどうしてもテンションが上がっちゃうんですよね。あんまりいろんな質問するもんだから、嫌がられたりしたこともあります。

――そんな平松さんが中でも好きなレジェンドを挙げるなら誰?

平松:母親の影響でチューリップとかサザンオールスターズとかが原体験にあるんですけどね。とにかく好きなフォークミュージシャンを挙げたらキリがない。特に山田パンダさん。パンダさん関係のレコードは全部持っているし、俺のパンダと周りに言ってます(笑)。

――お気に入りのレコードは?

平松:基本どんなものでも75~78年あたりがズバで好きなんですが、82年のナターシャセブンなんて最高ですね。日本のフォークで一番年上はだれ?ってなると、メンバーの高橋ともやさんだと思うんです。1941年生まれで、アメリカンフォークを日本語に訳して歌うというのを最初にやった人なんじゃないかと。ブルーグラスバンドなんですけど、82年のアルバムは、サウンドがグっとバンドサウンドになっていて、これを聴いたときほんとにぶったまげました。こんなサウンドのバンドをやりたい。。

――まさしく昭和フォークの申し子ですね。

平松:ベテランたちが今ライブでやらないような曲を広めていきたいという気持ちがあるんです。そのままカバーしてもいいし、自分なりに消化してアウトプットしてもいい。かぐや姫なら『赤い花束』が好きで、チューリップだと『娘が嫁ぐ朝』。でも『神田川』も『なごり雪』も『心の旅』も、『学生街の喫茶店』も大好きだから、決してマニアックにいきたいってわけじゃない。ただ、自分がやってることは、他にできる人がいないという自負がありますから、名曲もそうじゃないものもうまく取り入れたいって感じ。

――多くのレジェンドたちへのリスペクトを感じます。

平松:歌い継ぐという言葉ってちゃんと捉えたらすごい大事だなって思うんです。自分はこれまでフォークのイチファンでしかなかった。ほんとに最近まで。でもこんな自分でもそういう方々とご一緒したりするようになるとキャリアの差はあれど仕事仲間といえば仕事仲間なわけじゃないですか。あんまり好き好き言っているわけにもいかなくなってくるんですよ。肩を並べるなんておこがましいですが、そういう気持ちでやってます。

――とにかくフォークが好きということはわかりました(笑)

平松:関西フォークはあまり聴かないんです。ブルースが入っているのは特に。ただURCと呼ばれる人たちは別格。だから、フォークが好きっていう人がいると、「どの?」ってつい聞きたくなるんです。でもそれ聞いてくるやつ、めっちゃ嫌じゃないですか!(笑)「どの?」なんてほんと最悪。でも言いたくなっちゃうくらい幅広くて、僕には僕のフォークがあるんですよね。

――しかしギターと歌唱力は言わずもがな、喋りがほんとに尊敬します。

平松:ライブの自己評価ってあるじゃないですか。あれが音楽と喋りの比重が半々くらいになっているんですよ。今日は曲よかったけど、MCがだめだったなぁって。いとしこいしが好きなんです。話が旨いひとの話って気持ちいいじゃないですか。もちろん遠く及ばないけど。だから人のライブ見に行くときも、ナニ話すのかは結構重要視しちゃいます。まあ30分なら、30分そのものがその人なので。喋りも含めてこいつなんだなって思ってもらえたら嬉しい。喋りたくなっちゃうっていう欲をいなしきれないのが平松!


平松稜大/ひらまつりょうた
平成6年、神奈川県生まれ。シンガーソングライター、たけとんぼの作詞作曲、ギタリスト、ボーカル。2022年に曽我部恵一主宰のレーベルより『たけとんぼ』をリリース。今年2026年2月25日に初のソロアルバム『ホームメイド』が発売。

撮影・文:トロピカル松村