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昭和マイルド

原田真二が1984年に予言した
2026年の『Modern Vision』
――本誌・編集長

編集部

「音楽による平和構築」を掲げ、社会貢献や平和活動に積極的に取り組む、原田真二。84年にリリースした名盤『Modern Vision』に託したメッセージは今も強く世の中に響く。その検証の場「原田真二マニアック」にてひとつの奇蹟が起こった。

3月20日、横浜レニーで「原田真二マニアック」が開催された。原田真二マニアックとは、タイトルが示すように、原田真二にまつわる枝葉末節の疑問を公衆の場で本人にぶつけていくというスタイルのトークライブである。

二部では原田真二本人のアコースティック・ライブも行われるこのイベントは、原田真二研究家を名乗る筆者と同好の士である野口徹教授が2022年からスタートさせたものだが、これは単なるファンの酔狂にあらず。原田真二にまつわる数々の事象の裏側に隠れていた新事実を明らかにすることは、日本のポップミュージック史の真実に迫ることを意味する。もし原田真二が77年に「てぃーんずぶるーす」でデビューしていなかったら、その後の日本のポップミュージックは違った展開を見せていたに違いない、という確信のもと、毎回多くの資料と音源、証言を可能な限り集め、細部まで調べたうえで作り上げたパワーポイントのプレゼンシートをもとに進行する。

事前打ち合わせなしのぶっつけ本番、予期せぬ質問を本人にぶつけると、記憶の奥からさまざまな真実が出てくる。その様子が実にスリリングである。第一回の生い立ちから、学生時代、デビュー経緯、アイドルからアーティストとして確固たる地位を築くまでを足掛け4年間、計9回(番外編を入れれば10回)にわたり事細かく検証してきたが、あらゆる場面において偶然と必然の組み合わせの妙と気づかされ、そこからさらに“たら”れば”の妄想が始まる。これは原田真二に限ったことではないかもしれない。が、ロックの大衆化、あるいはロックと歌謡曲の融合、その後のポップミュージックの進化を考えた場合、原田真二の果たした役割は限りなく大きく、早すぎた天才の一挙手一投足に深い意味を見出すことができるのだ。

3月20日のテーマに掲げたのは、84年にリリースした原田真二&クライシスの4枚目にして最後のアルバム『MODERN VISION』。82年のアメリカ音楽修行を経た83年から心機一転、それまでのハードロック、プログレッシブロック路線からダンスミュージックへの積極的なアプローチをはじめるのだが、その萌芽となったのが同年の『SAVE OUR SOUL』、続いてリリースされた兄弟的なアルバムが『MODERN VISION』であった。デビュー以来、音楽で世の中を平和にするという使命感をもって音楽活動を続けてきた原田真二。ここでは進化するテクノロジーの一方で失われていく人間性というシリアスなテーマを『MODERN VISION』というキーワードで伝えようと考え、それを最先端のダンサブルなロックで表現しようと試みた。具体的に言えば、1930年代から84年までのブラック・ミュージックの歴史をアラカルトとして提示しつつ、1曲ごとにドラマを並べたようなアクト仕立てで構成し、ひとつの映画のように聞かせるコンセプトアルバムということである。そんな大がかりな試みを、たった2週間のレコーディング期間で、メンバー4人の手で作り上げた。今聞いても『MODERN VISION』はかなり画期的なアルバムである。

また、80年から85年まで存在した原田真二&クライシスは、革新的なバンドサウンドの追究期であるとともに今につながる社会に対してのメッセージ提案していた、との結論を導き出した。最後、世界中が混迷極めるいまこそ、クライシスの音楽が必要であると力説する我々二人のメッセージに応えるかのように、古田、関の両氏がステージ前に登場。BGMに「プラネット・ヴィジョン」が流れるなか「真二の姿勢は昔からブレていない。素晴らしい」(関)、「今こそ世の中には真二の歌が世の中に必要。また一緒にやろう!」(古田)とコメント。原田真二も「やりましょう!」と返し、ここに、原田真二が80年代前半に組んでいたバンド、原田真二&クライシスのメンバーの再集結が実現した。不意のシチュエーションに来場者からどよめきと歓喜の声があがり、大きな感動に包まれるなか、一部が幕を閉じた。

二部のアコースティック・ライブは一部の内容を受け、『MODERN VISION』の収録曲を中心にギターとピアノの弾き語りで披露。作り込んだ曲をひとりで再現することは可能なのかという心配は原田真二の前では杞憂でしかない。「銀河dreaming」「Spring shower」「Let me hold you again tonight」「Planet vision」「Summer wave」「Modern Vision」を情感たっぷりに歌いあげた。途中のMCでこう訴える。「暴力は暴力しか生まない。直ちに殺し合いを辞めるべきだ。我々一人ひとりが声をあげよう。今がそのときだ」。原田真二の切実なメッセージは70年代にジョン・レノンが掲げた平和思想をさらに強くしている。「人に頼らず自分でやらなければいけない。自分自身であろうとすることを根本に、暴力ではなくコミュニケーションによって平和は実現できる」。If  You Want It……。もしあなたが平和を望むなら、原田真二の歌に耳を傾けてほしい、と切に思う。

左から関雅夫、原田真二、古田たかし

取材・文:竹部吉晃