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昭和マイルド

いち早く神戸レコードの
ガイドブックを刊行したい
――DJ HARRY

昭和40年男が残したもの

ポート~ピア~シティライトオンザウェ~イブ♪ 40年男にとって憧れの港町だった神戸。煌びやかだったあの頃の神戸をテーマにしたレコードを掘り続け、保存と普及に努める稀有な地元人がいた。

※この記事は雑誌『昭和40年男』2026年3月号に掲載したものを一部抜粋したものです。

村上春樹原作の映画『風の歌を聴け』、平中悠一原作の映画『シーズレイン』、古手川祐子主演の『花の降る午後』に、柴田恭兵主演の『べっぴんの町』。安藤忠雄が建てた「ローズガーデン」に、横尾忠則がプロデュースした「メイドインニッポン」も。“かつての神戸”は昭和40年男にとって間違いなく憧れの街だった。あの頃に想いを馳せる地元人も少なくないなか、昭和41年生まれのDJハリー氏は神戸のご当地レコードを通して懐かしむ少し変わった存在だ。

「今の神戸もいいですよ。でも神戸は昭和の街。平成、令和はイメージがない。1995年の阪神大震災の前と後とでは違う。僕が集めたレコードは震災前のものですね。ジャケットに当時の街並みが写っていたり、歌詞からあの頃を感じられるから、懐かしさと楽しさでどんどん集めるようになっていきました」

 震災のときハリー氏は29歳。うだつのあがらない生活から一念発起し、猛勉強の末に国家資格を取得したというから凄い。

「趣味より生活って震災で思いました。それまではバイトでファミコンゲームの音楽を作ったり、リズムキングスというワールドミュージックを扱う神戸のレコード店でバイトしたりしてました。大学時代はフュージョンバンドのキーボード担当だったんですよ。真面目に仕事をするようになってからはたまに100円のレコードを漁るくらいになっていたんですが、『神戸まつり』のレコードを手にしてよく通ったお店やスポットを思い出すようになり、ご当地レコードを集めるようになっていったんです。今では7インチ盤が150枚以上あります」

 入手方法はさまざまだが、最近はネットを駆使することも。

「大きく分けて4つのご当地ものを集めています。まずポートピア博覧会など、神戸のイベントにまつわるもの。これはゴダイゴの曲がいちばん有名ですね。それから神戸という歌詞が出てくるもの。そして星電社や神戸そごうといった企業が出しているもの。あとは番外編で実は横浜だったってもの(笑)。とにかく歌詞がわかるっていいもんですよ。当時働いていたレコ―ド店の店主に言われたんです。『今はソウルとか聴いているけど歳いったらきっと歌謡曲に落ち着きまっせ』って。あの言葉はこの年になるとよくわかります。いい歌詞だと思うことが本当にたくさんある。それに友達と音楽の話をしていても歌謡曲のほうが盛り上がるんですよね」

 ご当地レコードを集めている人がいる、と巷で話題になり、神戸のイベントに呼ばれるようになっていったそうで。

「昭和40年男には涙物の『タイムトリップ神戸』というムック本があるんです。それを手掛けた編集者の松本浩嗣さんと、ラジオパーソナリティーの大久保かれんさんのトークイベントに呼んでいただき神戸の音楽をかけました」

 また、気鋭のアーティストのツジオスタジオ(『ポートアイランド』は名盤!)さんや、シンリズム(『赤いタワーまで』も名曲)さんにコメントをもらって読み上げたりもしたそう。これを機にリスニングサロンを開くようになったという。そして、レコードというカタチで神戸の情景を残してくれた人たちへの感謝を込めて、それらを知ってもらうために本にしなければという使命感が生まれ始めた。

「本にするなら曖昧なことを書けないから、あらためて神戸の歴史を調べたりしなければいけなくて、今度は古書を漁ったりし始めているのですが……。還暦になっても夢はありますよ。子育てだってまだ途中ですから」


DJ HARRY/DJハリー
昭和41年、兵庫県生まれ。DJ、ムック本『タイムトリップ神戸』の音楽担当。ソウル芝田の名で国内盤ブラックミュージックを紹介するブロガーでもある。テーブルサッカーゲームを通じて出会ったアメリカ人から依頼を受け、PC-88のゲーム音楽を制作していた経歴ももつ。

取材・文:トロピカル松村
写真:久保佳正