昭和マイルド ディレクターの「わざわざ飾らなくてもいい」おうちの昭和グッズコラム/『飾り窓のデコイ』第3回
友人を家に招いたときに「面出し(めんだし)の多い家だね」とツッコまられた。確かに棚にレコードをわざわざ面で見せて飾っているし、フリスビーや古いメジャーリーグヘルメットを壁にかけているから間違いない。僕は昭和50年代頃の若者の部屋を古雑誌で見るのが好きなのだが、彼らのなんと面出しの多いことか。ポスター、サーフボード、ギターに、お気に入りの洋服や、シューズまで。考えてみるとあの頃の若者は、現代よりずっと「鑑賞して楽しむ」文化の中にいたのかもしれない。1988年生まれの筆者の世代には、主張の多い部屋はあまりお洒落と捉えられない。でも、思う存分飾って、眺めて、暮らすのって結構楽しいもんなんだよと声高に伝えたい。今日も僕は飾り窓のデコイを見て、幸せな気持ちになっているから。
クリスタルのウイスキーデキャンタにわざわざウイスキーを詰め替えたり、限定ボトルをガラス棚に飾ったり、昭和はお酒にも面出しの美学を持っていたようだ。なかでも極めつけだと思うのが、装飾ボトル。特にサントリーオールド、通称ダルマは、かなりの衣装持ちであることをご存じだろうか。なぜウイスキーの瓶に装飾を施すようになったのか詳しい経緯はわからないが、写真のアメフト選手の他にも、ウエスタン、兵隊、騎士など、探せばいろんなものが出てくる(木彫りの熊がダルマのミニボトルを抱いたものなどもあり、掘りすぎると沼にハマってしまうので要注意)。昭和の「鑑賞して楽しむ文化」は、便利主義の現代とは別世界なのか、これがまた使い勝手がすこぶる悪い。ウイスキーを飲もうと思い、蓋を開ける前にまずヘルメットを取ってあげる必要があるだけでなく、注いだときに滴り落ちる水滴がものの見事に衣装に沁みついてしまうのである。そんな経緯からどうもダルマに手が伸びなくなってしまい、まだまだ残っているのにただ飾られているだけのものと化していくわけだ。飲むことなく棚で埃をかぶって置かれているオールドがまた、昭和らしさを引き立ててくれるのだけどね。
トロピカル松村
とろぴかる・まつむら|1988年兵庫県生まれ。昭和マイルド、CRTジーンズのディレクター。POPEYE Web編集ライター。サーフィン誌の編集者を経て2017年独立。昭和50年代・西海岸ブーム期の私設博物館を2025年に閉館。著書『MY NIPPON SURFING SOUNDS』がある。






